■ベネチア映画祭
★作品賞:「ロベレ将軍」監督:ロベルト・ロッセリーニ
※第二次大戦末期、ナチ占領下のジェノヴァに、グリマルディ大佐と自称する男がいた。本名をジョバンニ・ベルトーニ(ヴィットリオ・デ・シーカ)という彼は、バクチと女に身をもちくずし、ナチ司令部の下士官と結託して、イタリア・パルチザンを釈放させるといっては家族から金をせしめていた。その頃、連合軍は北イタリアのパルチザンと連絡をとるため、イタリア人将軍ロベレを南イタリアに潜入させた。ナチ司令官のミューラー大佐(ハンネス・メッセマー)は、彼を捕えてパルチザン組織の絶滅を計るが、将軍はナチの一分隊に発見され射殺される。大佐は、ニセのロベレ将軍を仕立て、彼をオトリにしてパルチザンを探ることを思いつく。そして、替え玉に選ばれたのはグリマルディだった。
ロベルト・ロッセリーニ監督が数年の沈黙を破って制作したレジスタンスにまつわる作品。
※ロベルト・ロッセリーニは,1906年5月8日ローマ生まれ。イタリア映画界でのネオレアリズモ運動の先駆的な監督の一人であり、またフランスのヌーヴェル・ヴァーグの映画作家たちにも多大な影響を与えた。1941年長編第1作を完成。以後30本以上の長編映画を制作。1977年6月3日心臓発作で死去。
ロベルト・ロッセリーニの他の監督作には、第二次大戦末期のローマにおけるレジスタンスの闘いを描いた戦争3部作の第1作でイタリアン・ネオレアリズムの記念碑的作品「無防備都市」Roma, citta aperta (1945年:YouTubeのFrancesco Francesco Francesco Francesco)、第二次世界大戦末期、イタリア半島を北上する連合軍兵士と民衆の交流を6つのエピソードで描いた戦争3部作の第2作「戦火のかなた」(1946年:YouTubeのPaisa-1946. Napoles ocupada, 1943)、アンナ・マニャーニ主演で撮った2つの愛の物語「アモーレ」(1948年:YouTubeのEl amor 1948 Anna Magnani)、人を殺すことができるカメラが小さな漁村に巻き起こす騒動をジェンナロ・ピサノ、マリリン・ビュフェル共演で描いた「殺人カメラ」(1948年)、戦争により廃墟と化したベルリンを舞台に半焼したアパートで暮らす少年とその家族を描いた戦争3部作の第3作「ドイツ零年」(1948年:YouTubeのGermania anno zero - Rossellini)、戦争により祖国を追われ、夫以外誰も知らない島で暮らす女性の姿をイングリッド・バーグマンマリオ・ヴィターレ共演で描いた「ストロンボリ/神の土地」(1950年:YouTubeのStromboli Terra Di Dio 1949)、実在の聖人フランチェスコの事蹟を虚飾を排しナザリオ・ジェラルディ、アルド・ファブリッツィ共演で描いた「神の道化師、フランチェスコ」(1950年:YouTubeのFrancesco, Giullare di Dio (Roberto Rossellini, 1950))、聖書が説く7つの大罪の一つ一つをテーマにしたエピソードによるオムニバス映画「七つの大罪」(1952年:第5話:ねたみ)、米国商社の駐伊総代理人夫人が我が子を自殺で失ったことをきっかけに社会の矛盾に目覚める姿をイングリッド・バーグマン、ジュリエッタ・マシーナ他の共演で描いた「ヨーロッパ一九五一年」(1952年:YouTubeのEuropa 51 / Ingrid Bergman)、イタリアの5人の監督がイングリッド・バーグマンやアリダ・ヴァリの出演で女性の魅力を描いたオムニバス「われら女性」(1952年:YouTubeのIngrid Bergman in Siamo Donne(part1))、結婚生活が危機にある夫婦のイタリア旅行をイングリッド・バーグマン、ジョージ・サンダース共演で描いた「イタリア旅行」(1953年:YouTubeのViaggio in Italia / Ingrid Bergman)、不倫の恋に悩む人妻の姿をイングリッド・バーグマン、マチアス・ヴィーマン共演で描いた「不安」(1954年)、フランス救国の英雄ジャンヌ・ダルクの過酷な運命をイングリッド・バーグマン主演で描いた「火刑台上のジャンヌ・ダルク」(1954年)、インドにおける象使いの青年の恋、ダム建設に従事してきた土木技師、森を愛する老人、主人を失った小猿など4つのエピソードで構成したドキュメンタリー「インディア」(1958年)等がある。
★主演男優賞:ジェームス・スチュアート「或る殺人」
※「或る殺人」は、オットー・プレミンジャー監督作。妻(リー・レミック)を犯した知人を復讐のため殺害した夫(ベン・ギャザラ)。検察側は妻と知人は前々から不倫関係にあったと主張する。果たして真相は?裁判で弁護士(ジェームズ・スチュワート)と検察のが激しく衝突する。主人公の弁護士スチュワートがジャズマニアという設定で、実際彼が演奏するシーンもある。
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★主演女優賞:マドレーヌ・ロバンソン「二重の鍵」
※「二重の鍵」は、クロード・シャブロル監督作。妻子ある身でありながら愛人をつくってしまったアンリ(ジャック・ダクミーヌ)。男は人目もはばからずに愛人レダ(アントネラ・ルアルディ)の家に通うが、ある日、レダは何者かに殺される。
マドレーヌ・ロバンソンはアンリの妻テレーズ役。他に長男リシャールにアンドレ・ジョスラン。父の気にいりの娘エリザベトにジャンヌ・ヴァレリー。彼女の婚約者ラズロにジャン・ポール・ベルモンド。
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■カンヌ映画祭
★パルムドール:「黒いオルフェ」監督:マルセル・カミュ
※リオのカーニバルを翌日に控えた日、田舎から出て来た少女ユーリディス(マルベッ・ドーン)は、市電の運転手オルフェ(ブレノ・メロ)と知り合い、カーニバルを通して深く愛し合うようになる。しかし、オルフェには将来を約束された婚約者がいた。アカデミー賞外国語映画賞も受賞。
★監督賞:フランソワ・トリュフォー「大人は判ってくれない」
※男子校に通う多感な少年アントワーヌ(ジャン・ピエール・レオ)は「女」に「悪戯」に「映画」に夢中だ。何かと目立つ彼は、常に大人の目の敵にされてしまう。大人たちはそんなアントワーヌを反抗期だというが…。
フランソワ・トリュフォー監督の自伝的ともいえる映画。他の出演は、父ジュリアンにアルベール・レミー、母ジルベルトにクレールモーリエ、親友ルネ・ビジェーにパトリック・オーフェー。
★主演男優賞:ディーン・ストックウェル、ブラッドフォード・ティルマン、オーソン・ウェルズ「強制」
★主演女優賞:シモーヌ・シニョレ「年上の女」
★審査員特別賞:「STERNE」(ブルガリア=東独)
★国際批評家賞:「ARAYA」(ベネズエラ)、「二十四時間の情事」(仏)
★この年の主要な作品
◆「お熱いのがお好き」監督:ビリー・ワイルダー
※ 1929年、禁酒法時代のシカゴで、売れないバンドマンのジョー(トニー・カーティス)とジェリー(ジャック・レモン)は暗黒街一味による殺人現場(モデルは聖バレンタインの大虐殺)を目撃してしまったことから、ヴォーカルのシュガー(マリリン・モンロー)をはじめとする女性ばかりのバンドに女装してまぎれこみ、マイアミへ逃れるが…。
AFI選出の“ベスト・ハリウッド・コメディ100”で第1位に輝いた。
◆「北北西に進路を取れ」監督:アルフレッド・ヒッチコック
※広告代理店経営者のロジャー(ケイリー・グラント)は、ある日タウンゼント(ジェームズ・メイスン)ら宝石密輸団からキャプランというスパイと間違えられ、殺人の濡れ衣を着せられてしまう。逃亡しながら事件の真相をつかもうとする彼に、謎の美女(エヴァ・マリー・セイント)が絡み…。スリリングかつロマンティック、そしてユーモア精神をも忘れないヒッチコックの名演出。
◆「リオ・ブラボー」監督:ハワード・ホークス
※テキサス州のメキシコ国境に近い町、リオ・ブラボーの保安官チャンス(ジョン・ウェイン)。仲間はアル中のデュード(ディーン・マーチン)と若造のコロラド(リッキー・ネルソン)、そして口うるさい助手のじいさん、スタンピー(ウォルター・ブレナン)。チャンスは仲間と共に、逮捕された弟を奪い返そうとする、ならず者のネイサン一味と対決する。
◆「蛇皮の服を着た男」監督:シドニー・ルメット
※原作・脚本:テネシー・ウィリアムズ。アメリカ南部のある町に、蛇皮の服を着た流れ者(マーロン・ブランド)がやってきた。彼は雑貨屋で働くことになり、雑貨屋の女主人(アンナ・マニャーニ)は彼に強く惹かれていく。だが、それに気づいた嫉妬深い亭主は、彼女を射殺する。南部の超保守的で陰湿な因襲が背景にある。
◆「夜を楽しく」監督:マイケル・ゴードン
※偶然発生した電話回線のトラブルがふたりの男女(ロック・ハドソン、ドリス・デイ)を結びつけ、そのまま恋に発展してしまい…。
◆「勝手にしやがれ」監督:ジャン・リュック・ゴダール
※警官を殺し、パリに逃げてきたミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)はアメリカ人の恋人パトリシア(ジーン・セバーグ)との気楽な生活を楽しんでいた。だが、愛を確かめたい彼女は彼の居場所を警察に密告してしまう。「ヌーヴェルヴァーグ」の代表的存在であるジャン=リュック・ゴダールの長編デビュー作にして最高傑作。
◆「いとこ同志」監督:クロード・シャブロル
※いとこのポール(ジャン・クロード・ブリアリ)を頼って、進学のため田舎からパリに出てきたシャルル(ジェラール・ブラン)。ポールのアパートで暮らすうちに、そこに集まってくる女性のひとりに恋心を抱く。しかし、状況はことごとくシャルルの裏目に出る。中平康監督作『狂った果実』の影響下から生まれた、初期ヌーヴェル・ヴァーグの代表的作品。