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1980年代

1989年の主要な映画4(アカデミ賞主要部門等の受賞作以外)

1989年の主要な映画4(アカデミ賞主要部門等の受賞作以外)

◆「仕立て屋の恋」監督:パトリス・ルコント
※公園でピオレットという青年が殺された。捜査を担当した刑事(アンドレ・ウィルムス)は、以前強制わいせつ罪で捕まったことのある仕立て屋イール(ミシェル・ブラン)の犯行ではと疑う。極端にきれい好きで孤独なイールは近所の人々からは嫌われており、売春宿に通い、ボーリング場で抜群の腕を披露していたが、そんな生活にも変化が起きていた。中庭をはさんで向かいに住む美しいアリス(サンドリーヌ・ボネール)を、夜毎ただ覗き見していたのだ。彼はアリスに恋い焦がれ、次第にその想いを募らせてゆく。アリスの部屋に時々恋人のエミール(リュック・テュイリエ)が訪れるのも知っていた。アリスはエミールとの結婚を願っていたが、エミールはいつも返事をごまかしていた。ある夜、自分の部屋を覗いているイールに気づいたアリスは、最初ショックを受けるが、やがてあの事件のことを知っているかどうか確かめるためにイールに接近していく。
ジョルジュ・シムノンの「仕立て屋の恋」を、哀愁あふれるブラームスの四重奏曲の乗せて繊細な映像で描いた。
> YouTubeの「仕立て屋の恋」予告編

◆「動くな、死ね、甦れ!」(VHSのみ)監督:ヴィターリー・カネフスキー
※無垢であるがゆえに傷つきやすい少年と少女を、鮮烈かつ叙情溢れる美しい映像で綴り、1990年度カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール賞を受賞した。
第二次大戦直後、極東ソビエトの収容所地帯となった小さな炭鉱町、スーチャン。12歳のワレルカ(パーヴェル・ナザーロフ)は母親ニーナ(エレーナ・ポポワ)と二人で、また同い年のガリーヤ(ディナーラ・ドルカーロワ)は両親とバラックに住んでいる。ガリーヤが蚤の市でお茶を売って小遣い稼ぎをしているのを見て、ワレルカもお茶を売り、貯めた金でスケート靴を買うが、盗まれてしまう。だが、ガリーヤの助けでスケート靴を取り戻すことができた。家に帰ると母の愛人がいて、部屋に入れず、鍵穴から覗くと母は男と抱擁していた。ある日、ワレルカと母親は彼女が売り子をしている店の売上金を狙う男に襲われる。やっとの思いで逃げ延びたワレルカは、母に再婚を勧めるが、彼女はそんな幸せをあきらめていた。後ろの山では、彼と仲の良かった日本人捕虜が荼毘にふされていた。
※ヴィターリー・カネフスキーは、1935年9月4日ソ連極東・沿海地方のスーチャン(現パルチザンスク)生まれ。全ロシア映画大学在学中の1966年に投獄されるが、1974年釈放。1977年大学を卒業後、撮影所に入る。自伝的作品である長編2作目の本作で世界的に注目される。
ヴィターリー・カネフスキーの他の監督作には、望まない脚本を押し付けられて撮った初めての長編作品である「田舎の物語」(1981年)、サンクトペテルブルクの荒廃した通りで生活する少年たちや、かつてカネフスキーの映画に出演した少年との監獄での再会などを収めたドキュメンタリー「ぼくら、20世紀の子供たち」(1993年)、「動くな、死ね、甦れ!」の続編「ひとりで生きる」(1991年)などがある。

◆「利休」(VHS)監督:勅使河原宏
※野上彌生子の小説「秀吉と利休」を赤瀬川原平、勅使河原宏の脚本で映画化し、 モントリオール映画祭最優秀芸術貢献賞、ベルリン映画祭フォーラム連盟賞を受賞した。
信長(松本幸四郎)の死後、秀吉(山崎努)の茶頭となった利休(三國連太郎)は茶の湯を通して多くの武将を魅了し、わびの極致と言われる京都・山崎の待庵など贅の限りを尽くし自分の世界を築いていった。しかし、石田三成(坂東八十助)の台頭以来、秀吉と利休の関係が狂い始める。まず利休の愛弟子山上宗二(井川比佐志)が持ち前の口の悪さから秀吉の逆鱗に触れて打ち首にされた。さらに三成は秀吉に「利休が朝鮮征伐に疑義を抱いている」と告げた。茶室で秀吉と顔を合わせた利休が、朝鮮出兵に口を出したため、ますます秀吉を怒らせ、堺に閉居するよう命じられる。秀吉の正妻、北政所(岸田今日子)から利休の妻りき(三田佳子)に便りが届き、詫びれば自分からも許しを乞うとあった。しかし、りきから北政所への便りには丁重な礼の言葉があるだけで、秀吉はさらに腹をたて、利休に切腹を命じる。
※勅使河原 宏は、1927年1月28日東京で生まれ。父は華道草月流の創始者勅使河原蒼風。東京美術学校(現・東京芸術大学)卒業。1953年美術映画「北斎」で監督デビュー。アートシアター運動の中心人物で、1962年自身初の長編劇映画となある「おとし穴」を監督するが、これがアート・シアター・ギルド(ATG)初の日本映画となる。安部公房の作品を多く映画化し、国際的にも高く評価された。また草月流三代目家元として複数人で行う生け花「連花」など新しい華道を提唱し注目された。2001年4月14日74才で死去。
勅使河原 宏の他の監督作には、安部公房の原作を安部公房自身による脚本と武満徹による音楽、岡田英次、岸田今日子主演で映画化してカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞し、米アカデミー監督賞・外国語映画賞にノミネートされた「砂の女」(1964年:YouTubeのSuna no onna -- original Japanese trailer)、顔に大火傷を負った男が仮面によって他人の顔になりきろうとする様を仲代達矢、京マチ子、平幹二朗共演で描いた「他人の顔」(1966年:YouTubeの他人の顔 The Face of Another Trailer)、興信所の調査員になった男が失踪者を調査するうちに失踪の真の意味を知る様を勝新太郎、市原悦子共演で描いた「燃えつきた地図」(1968年)、米軍岩国基地から脱走した米兵と匿まい続ける日本人家庭で起こった出来事をキース・サイクス、李礼仙、岸輝子らの共演によりドキュメンタリー・タッチで描いた「サマー・ソルジャー」(1972年) スペインの天才建築家ガウディの全作品を通してその足跡を浮び上がらせたドキュメンタリー「アントニー・ガウディー」(1984年)、秀吉の養女で奔放な豪姫と反骨の茶人・古田織部の自由を貫いた生き様を仲代達矢、宮沢りえ共演で描いた「豪姫」(VHS:1992年:YouTubeの宮沢りえ Miyazawa Rie-豪姫 Gohime trailer)などがある。
また単品ではDVDが発売されていない作品が多いが、「砂の女」「おとし穴」「他人の顔」「サマー・ソルジャー」「燃えつきた地図」と、短編「北斎」「蒼風とオブジェ いけばな」「いのち」「東京1958」「ホゼー・トレス」「ホゼー・トレスPart1」「白い朝」「動く彫刻 ジャン・ティンゲリー」を収録した、「勅使河原宏の世界 DVDコレクション」がある。「利休」と「豪姫」はDVD化されていない。

◆「どついたるねん」監督:阪本順治
※ボクシングの試合で負傷して再起不能となった元チャンピオン安達英志(赤井英和)は、所属するナショナルジムを飛び出して自らのジムを設立した。ある日、英志のジムにふらりと現れた男は左島牧雄(原田芳雄)という元ウェルター級日本チャンピオンだった。英志は左島をコーチとして雇うが、ジムの練習生たちは英志の横暴さに嫌気をさして去ってしまう。ジムを閉めた英志はナショナルジムに戻り、会長の鴨井(麿赤児)とその娘・貴子(相楽晴子)、そして左島と共に現役カムバックを目指す。そんな時、英志のカムバック戦の相手が決まった。
ボクシングで再起不能となりながらもカムバツクに賭ける男の姿を、自身もWBC世界スーパーライト級タイトルマッチでTKO負けを喫し失踪、そしてカムバックした経験を持つ「浪速のロッキー」こと赤井英和主演で描いた。赤井自身のボクサーとしての半生を絡ませた自伝的作品でもあり、赤井の現役最終戦の対戦相手となった大和田正春も友情出演して壮絶なファイトを再現している。芸術選奨文部大臣新人賞、日本映画監督協会新人賞、ブルーリボン賞最優秀作品賞など受賞している。
※阪本順治は、1958年10月1日大阪府堺市生まれ。横浜国立大学教育学部中退。1989年「どついたるねん」で監督デビュー。2000年「顔」で、キネマ旬報ベストワン、2001年度日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した。
阪本順治の他の監督作には、高知を舞台にボクシングに賭ける中年男と事故で負傷したボクサーの復活を菅原文太、大和武士、桐島かれん共演で描いた「鉄拳」(1990年)、大阪・新世界を舞台に将棋に生きる若者の姿を赤井英和、加藤雅也、広田玲央名共演で描いた「王手」(1991年)、誘拐犯に息子を殺され妻にも去られてしまった男の復讐を大和武士、西山由海、芹沢正和、國村隼共演で描いた「トカレフ」(1994年)、死に際のヤクザに息子を母親の元へ送り届けるよう頼まれた探偵と弟分の旅を豊川悦司、真木蔵人、原田知世共演でコミカルに描いた「傷だらけの天使」(1997年)、万引き常習犯の主婦から家出中の息子の行方を探す依頼を受ける男の姿を真木蔵人, 鈴木一真共演で描いた「愚か者 傷だらけの天使」(1998年)、妹を絞殺し逃亡を続ける中で人生に目覚めていく中年女性の姿を藤山直美、佐藤浩市共演で描いた喜劇「」(2000年)、組織の跡目争いに翻弄される男たちの姿を豊川悦司、布袋寅泰、佐藤浩市共演で描いた「新・仁義なき戦い」(2000年)、佐藤浩市、キム・ガプス、チェ・イルファ、原田芳雄共演で1973年に発生した金大中事件の真実に迫った「KT」(2002年)、西原理恵子のコミック「ぼくんち」を基に水平島で貧しくも逞しく生きる3人の姉弟と彼らを取り巻く人々との触れ合いを観月ありさ、矢本悠馬、田中優貴共演で描いた「ぼくんち」(2003年)、敗戦直後の東京を舞台に進駐軍のクラブでジャズを演奏しながら生きていく若者の姿を萩原聖人、オダギリジョー、松岡俊介共演で描いた「この世の外へ クラブ進駐軍」(2004年:YouTubeのOut of This World 2004 - Movie Trailer)、海上自衛隊のイージス艦を乗っ取り日本に戦争を仕掛けるテロリストとイージス艦に残った自衛官の闘いを真田広之、中井貴一、寺尾聰、佐藤浩市共演で描いた「亡国のイージス」(2005年:YouTubeの亡国のイージス予告)、桐野夏生のベストセラー小説「魂萌え !」を基に平凡な主婦が夫の死をきっかけに世間を知り、失敗しながらも自分の足で人生を歩んでいくまでを風吹ジュン、三田佳子、常盤貴子共演で描いた「魂萌え!」(2007年)、梁石日の小説「闇の子供たち」を基に、臓器密売や幼児売買でタイの子供たちが取引されている現状を江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡共演で描いた「闇の子供たち」(2008年:YouTubeの「闇の子供たち」)、過去を捨てたはずだった孤独な男の復讐を藤原竜也と水川あさみ共演で描いた「カメレオン」(2008年:YouTubeのカメレオン)などがある。

◆「黒い雨」監督:今村昌平
※昭和20年8月6日広島に原爆が投下された。その時郊外の疎開先にいた20歳になる高丸矢須子(田中好子)は叔父・閑間重松(北村和夫)の元へ行くため瀬戸内海を渡っていたが、途中で黒い雨を浴びてしまう。5年後矢須子は重松とシゲ子(市原悦子)夫妻の家に引き取られ、重松の母・キン(原ひさ子)と4人で福山市で暮らしていた。地主である重松は先祖代々の土地を切り売りしながら、同じ被爆者で幼なじみの庄吉(小沢昭一)、好太郎(三木のり平)と原爆病に効くという鯉の養殖を始める。そんな重松の悩みは、自分の体より25歳になる矢須子の縁組だった。美人の矢須子には絶えず縁談が持ち込まれるが、必ずピカに合った娘という噂から破談になるのだった。
主演の田中好子の熱演は高く評価され、原爆の恐怖と悲劇を観る者に強く印象付けた日本映画の傑作。第13回日本アカデミー賞最優秀作品賞、 田中好子が最優秀主演女優賞、市原悦子が最優秀助演女優賞を受賞した。
> YouTubeのBlack Rain (1989) #1
※今村昌平は、1926年9月15日東京で生まれ。早稲田大学卒業後、1951年松竹に入社し小津安二郎監督の助監督、1954年に日活に移籍し川島雄三監督の助監督を務める。1958年テント劇場一座のバイタリティ溢れる役者や村人たちが繰り広げる騒動を描いた「盗まれた欲情」で監督デビュー。生涯に20作品を監督した。2006年5月30日転移性肝腫瘍のため79才で死去。
今村昌平監督の他の作品には、妻子の留守中に浮気をする銀座の薬局の主人をコミカルに描いた「西銀座駅前」(1958年)、六千万円のモルヒネをめぐって欲につかれた人間の醜さ滑稽さを長門裕之、中原早苗ほかの共演で描いた「果しなき欲望」(1958年:YouTubeのEndless Desire (1958) [Trailer])、十歳の少女・安本末子が綴った日記「にあんちゃん」を長門裕之、松尾嘉代共演で映画化した「にあんちゃん」(1959年)、米軍基地の街を舞台に軍から排出される残飯で豚を飼育して荒稼ぎするヤクザ一家がやがて自滅するまでを長門裕之, 吉村実子, 南田洋子, 丹波哲郎共演で描いた「豚と軍艦」(1961年:YouTubeの豚と軍艦)、女工からコールガールの元締めとなった女の半生を左幸子(ベルリン映画祭主演女優賞受賞)、吉村実子、北村和夫共演で描いた「にっぽん昆虫記」(1963年)、強盗に犯されたことでたくましく変わっていく女の姿を春川ますみ, 西村晃, 楠侑子, 露口茂共演で描いた「赤い殺意」(1964年)、エロと名の付くものなら何でも提供するエロ事師の仕事の実態と内縁の妻とその子供たちの複雑な関係を小沢昭一, 坂本スミ子, 近藤正臣共演で描いた「「エロ事師たち」より 人類学入門」(1966年:YouTubeのThe pornographers - Jinruigaku nyumon)、現実に失踪した人間の行方をその婚約者と共に追うという設定のもとに日本全国を歩いてその取材過程を映画に仕上げた「人間蒸発」(1967年:YouTubeのShohei Imamura on A Man Vanishes [Interview])、神話的伝統を受けついで生活する沖縄の孤島で因襲や近代化と闘う島民の生活を三國連太郎、松井康子、沖山秀子、嵐寛寿郎共演で描いた「神々の深き欲望」(1968年)、佐木隆三の直木賞受賞小説「復讐するは我にあり」を基に殺人を繰り返しながら逃亡を続ける男の姿を緒形拳, 小川真由美, 倍賞美津子、三国連太郎共演で描いた「復讐するは我にあり」(1979年:YouTubeの【予告篇】復讐するは我にあり)、江戸時代末期のええじゃないか騒動など騒然とした世相を背景に江戸東両国界隈に生きた下層庶民の生活を桃井かおり、泉谷しげる、緒形拳共演で描いた「ええじゃないか」(1981年)、深沢七郎の小説「楢山節考」と「東北の神武たち」を緒形拳、坂本スミ子共演で映画化しカンヌ映画祭パルムドールを受賞した「楢山節考」(1983年:YouTubeのnarayama 01/13)、明治後期から昭和初期にかけて東南アジアを舞台に活躍した女衒・村岡伊平治の半生を緒形拳、倍賞美津子共演で描いた「女ZEGEN衒」(1987年)、吉村昭の小説「闇にひらめく」を基に妻の浮気によって人間不信に陥り飼っているうなぎだけに心を開く中年男と彼をとりまく人たちの交流を役所広司、清水美砂共演で描いたカンヌ映画祭パルムドール受賞作「うなぎ」(1997年:YouTubeのうなぎ)、患者を肝臓炎としか診断しない町医者と彼を取り巻く町民たちの生き様を柄本明、麻生久美子共演で描いた「カンゾー先生」(1998年)、居場所を失った中年男と特異な体質を持つ女の愛を役所広司、清水美砂共演で描いた「赤い橋の下のぬるい水」(2001年)、アメリカ同時多発テロを風化させまいと世界の映画人11名が11分9秒1フレームの短編を監督したオムニバスで日本編は田口トモロヲ、麻生久美子が出演した「セプテンバー11」(2002年)などがある。



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この記事へのコメント

  • なお
  • 2009年04月24日 20:43
  • 読んでいて楽しかったです。ありがとうございます。

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