■アカデミー賞
★作品賞:「巴里のアメリカ人」監督:ビンセント・ミネリ
※ラストにジーン・ケリーとレスリー・キャロンがルノワールやロートレックの絵の世界に入り込み、踊るダンスシーンの豪華と完璧さは圧巻。ガーシュインの曲がモチーフに使われている。
★監督賞:ジョージ・スティーブンス「陽のあたる場所」
※貧しい青年ジョージ(モンゴメリー・クリフト)は、富豪令嬢のアンジェラ(エリザベス・テイラー)に心ひかれ、彼女との結婚の約束をとりつけるが、彼にはアリスという身寄りのない娘とも深い仲にあり、彼女から妊娠を告げられたジョージは、彼女を殺そうとするが……。
★主演男優賞:ハンフリー・ボガード「アフリカの女王」
※ジョン・ヒューストン監督。ドイツ領コンゴ、ドイツ軍に兄を殺されたローズ(キャサリン・ヘップバーン)は、おんぼろ船「アフリカの女王」号の船長(ハンフリー・ボガート)と出会う。ドイツ軍に復讐するため河を下る2人に危機が次々に迫る中、互いに惹かれ合う。スリリングな追跡シーン、そして爽快なラストが心を揺さぶる。
★主演女優賞:ビビアン・リー「欲望という名の電車」
※エリア・カザン監督。休暇と偽って妹のステラを尋ねてきたブランチ(ビビアン・リー)。だが、彼女を嫌う妹の夫スタンリー(マーロン・ブランド)は、彼女と顔を合わせるたびに暴言を浴びせ続ける。揚げ句に恋人のミッチにブランチの暗い過去をばらし、彼女を精神的に追い込んでいく。テネシー・ウィリアムズの名戯曲を完全映像化。
★助演男優賞:カール・マルデン「欲望という名の電車」
※舞台時代から演じていたブランチの恋人ミッチ役で受賞。
★助演女優賞:キム・ハンター「欲望という名の電車」
※ブランチの妹ステラ役。ゴールデングローブ賞女優賞も受賞。
■ベネチア国際映画祭
★作品賞:「羅生門」監督:黒澤明
※本賞およびアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、一躍世界に黒澤明監督の名前をとどろかせた傑作。時は平安時代、土砂降りの羅生門の下で、杣売り(志村喬)らが、3日前に起きた不思議な話を語り始めた。検非違使(森雅之)が殺され、盗賊の多襄丸(三船敏郎)が逮捕されるが、彼と検非違使の妻真砂(京マチ子)、さらにはイタコを使って冥界から呼び寄せた検非違使の霊と、それぞれ証言が異なっているのだ…。
★主演男優賞:ジャン・ギャバン「夜はわがもの」
★主演女優賞:ビビアン・リー「欲望という名の電車」
※
■カンヌ国際映画祭
★パルムドール:
☆「ミラノの奇蹟」監督:ビットリオ・デ・シーカ
※トト(フランチェスコ・ゴリザーノ)が六歳になった時、養い親のロロッタ婆さん(エンマ・グラマティカ)は死に、彼は十八歳になるまで孤児院に入れられた。やがて孤児院を出てミラノにやってきたトトは、街外れの広場に貧しい人々のための部落を作りはじめた。
☆「令嬢ジュリー」監督:アルフ・シェーベルイ
※アウグスト・ストリンドベルイの同名戯曲をアルフ・シェーベルイが脚色・監督して映画化。伯爵(アンデルス・ヘンリクソン)のひとり娘・ジュリー(アニタ・ビョルク)は夏至祭の夜、下男のヤン(ウルフ・パルメ)を挑発的な態度で誘い身を任せる。しかし、一夜明けて…
★監督賞:ルイス・ブニュエル「忘れられた人々」
※「忘れられた人々」は、感化院を脱走しスラム街に戻った少年が、仲間とともに悪行の限りを尽くしやがて破滅していく姿を描いたルイス・ブニュエル監督の中期を代表する作品。
★主演男優賞:マイケル・レッドグレーブ「The Browning Version」
★主演女優賞:ベティ・デイビス「イヴの総て」
※ジョセフ・L・マンキーウィッツが脚色及び監督を担当し、2年連続のアカデミー賞脚色賞、監督賞を受賞。ベティ・デイヴィスは、大女優マーゴ・チャニングを演じた。
★この年の主要な作品
◆「見知らぬ乗客」監督:アルフレッド・ヒッチコック
※ 列車の中でテニス選手ガイ(ファーリー・グレンジャー)は見知らぬ乗客ブルーノ(ロバート・ウォーカー)から声をかけられ、交換殺人をもちかけられるが、取り合わずに列車を降りた。しかし、ブルーノはガイの妻を殺害。容疑者として疑われるガイに再びブルーノが近づく―「今度は君の番だ」。パトリシア・ハイスミスの小説をレイモンド・チャンドラーが脚色。
◆「ホフマン物語」監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
※オッフェンバックのオペラを映画化したファンタジー。詩人・ホフマンが語る3つの幻想的な物語がオペラとバレエの手法によって展開される。魔法の眼鏡をかけてしまったホフマン(ロバート・ラウンズヴィル)は人形・オランピア(モイラ・シアラー)に恋をしてしまう。
◆「遊星よりの物体X」監督:ハワード・ホークス
※SF映画の幕開けとなった重要作。1982年にホラー映画の鬼才ジョン・カーペンターによって「遊星からの物体X」としてリメイクされた、カルト的人気を誇る傑作SF映画。
◆「地球の静止する日」監督:ロバート・ワイズ
※戦争など地球で勃発する数々の闘争が宇宙の星々の平和を脅かすとして、遊星よりの使者クラートゥ(マイケル・レニー)が地球に現れ、すべての争いをやめるべく地球人に勧告。しかし、それがなかなか聞き入れられないとなるや、彼は全世界の動力を停止するという手段に打って出た。特撮効果よりもドラマを重視した作りになっている。
◆「田舎司祭の日記」監督:ロベール・ブレッソン
※寒村に赴任した若き司祭(ジャン・リヴィエール)が、病に冒されながら強い信仰と使命感から献身的な努力を続けるが、村人から誤解を受けて悩む。陰影を巧みに活かした撮影が印象深い。