■アカデミー賞
★作品賞:「波止場」監督:エリア・カザン
※ボクサーくずれのテリー(マーロン・ブランド)は、兄チャーリー(ロッド・スタイガー)が波止場を仕切るボスのジョニー(リー・J・コッブ)の命令で仲間を殺す現場を目撃。その妹イディ(エヴァ・マリー・セイント)の嘆き悲しむ姿に心動かされ、バリー神父(カール・マルデン)に真相を告白するが、やがてチャーリーも殺害されるに及び、単身ボスの本拠地へ乗り込む。
★監督賞:エリア・カザン「波止場」
※ピューリッツァー賞受賞の原作をドキュメンタリー・タッチの迫真力で映画化。スタジオでの撮影を捨て、ニュージャージー州ホボーケンの波止場で撮影された。
★主演男優賞:マーロン・ブランド「波止場」
※プロデューサーはホボーケン出身のフランク・シナトラの起用を望んだが、監督がマーロン・ブランドを強く希望。
★主演女優賞:グレース・ケリー「喝采」
※監督:ジョージ・シートン。かつてミュージカルスター、フランク・エルジン。数年前に自らの不注意で息子を事故死させてしまった彼に新作舞台の出演依頼が入る。
ブロードウェイで上演され賞賛を浴びたクリフォード・オデッツ原作の舞台劇を映画化。他の出演はビング・クロスビーほか。
★助演男優賞:エドモンド・オブライエン「裸足の伯爵夫人」監督:ジョセフ・L・マンキウィッツ
※酒場の踊り子マリア(エヴァ・ガードナー)が映画監督ハリー(ハンフリー・ボガート)らに見出され、身の回り品ひとつ持たず裸足のままローマへ飛んで映画に出演。やがてハリウッド・スターとなった彼女は、イタリアの伯爵(ロッサノ・ブラッツィ)と結婚するが、伯爵が戦争で性的不能者となったため、不倫の恋に走る。
映画は伯爵夫人マリアの葬式から始まり、式に参列しているハリーの言葉がナレーションとなって、波乱に満ちたヒロインの生涯が回想されていく。エドモンド・オブライエンはハリーと交互に回想する映画会社の宣伝担当者オスカーを演じている。
★助演女優賞:エバー・マリー・セイント「波止場」
※マーロン・ブランドと同じアクターズ・スタジオ出身の演技派。これがデビュー作。
■ベネチア国際映画祭
★作品賞:「ロミオとジュリエット」監督:レナート・カステラーニ
※シェイクスピア原作の名作悲劇を、イタリアンリアリズムの名匠レナート・カステラーニ監督が映画化。出演はローレンス・ハーヴェイ, スーザン・ジェントール, フローラ・ロブスン。
★主演男優賞:ジャン・ギャバン
「現金に手を出すな」監督:ジャック・ベッケル
※大量の金塊を盗んだ初老のギャング・マックスとリトンは、その仕事を最後に裏の世界からの引退を決める。しかし、金塊の秘密を知った麻薬密売人のボスにリトンが捕らえられてしまい…。ジャンヌ・モロー, リノ・ヴァンチュラ、ルネ・ダリー。マックスの奥さん役ギャビー・バッセはギャバンの奥さんだった人。
☆「われら巴里っ子」監督:マルセル・カルネ
※チャンピオンになれなかった元ボクサー・ヴィクトル(ジャン・ギャバン)は拳闘クラブを開き、自分の夢を託して若者を育てるが、妻ブランシュ(アルレッティ)はそんな夫を快く思わなかった。ヴィクトルが教えているアンドレ(ローラン・ルザッフル)は、恋とボクシングの間で気持が揺れていた。
★主演女優賞:該当なし
■カンヌ国際映画祭
★パルムドール:「地獄門」監督:衣笠貞之助
★監督賞:アレクサンデル・フォルド「バルスカ街の5人組」
★主演男優賞:該当なし
★主演女優賞:マリア・シェル「最後の橋」
★審査員特別賞:「しのび逢い」(仏)
★国際批評家賞:「洪水の前」(仏)
★この年の主要な作品
◆「道」監督:フェデリコ・フェリーニ
※美しい心をもつジェルソミーナは何度も夫ザンパノ(アンソニー・クイン)を信じ、その度に裏切られる。大道芸人の笑顔という仮面の下の悲しみをほとんどパントマイムで表情豊かに、フェリーニの生涯の妻ジュリエット・マシーナが演じている。そしてニーノ・ロータの音楽…
◆「夏の嵐」監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
※19世紀オーストリア支配下のヴェニス。そこで運命的に出会った伯爵夫人(アリダ・ヴァリ)と青年将校(ファーリー・グレンジャー)の激しい愛と裏切り。華麗な映像とブルックナーの交響曲第7番。
◆「麗しのサブリナ」監督:ビリー・ワイルダー
※資産家ララビー家の運転手の娘サブリナ(オードリー・ヘップバーン)は、ララビー家の次男デビッド(ウィリアム・ホールデン)に失恋し、パリの花嫁学校へ。ところが、修業して戻ったサブリナを見て、デビッドは逆に熱をあげてしまう。兄ライナス(ハンフリー・ボガート)がその邪魔をするが…。ビリー・ワイルダーが製作、監督、脚色の三役をこなす。
◆「裏窓」監督:アルフレッド・ヒッチコック
※足を骨折し車椅子生活を強いられているカメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュアート)は、退屈しのぎにアパートの窓から望遠カメラでのぞき見をしていたために、いつしか殺人事件に巻き込まれて・・・。 主人公が身動きのとれない状態であることを逆手にとり、さまざまなスリルの趣向と演出が、素晴らしい緊迫感を与えてくれる。主人公の恋人役はグレース・ケリー。
◆「スタア誕生」監督:ジョージ・キューカー
※前座の歌手エスター(ジュデイ・ガーランド)は、のんだくれのスター、ノーマン(ジェームズ・メイスン)と知り合い、その才能を認められて映画界入りする。チェスターは次第に頭角を現していくが、一方彼女と結婚したノーマンはどんどん落ちぶれていき、ついには・・・。
◆「ケイン号の叛乱」監督:エドワード・ドミトリク
※第二次大戦中、嵐の海上で艦隊からはぐれた駆逐艦ケイン号。それまで威張っていた艦長(ハンフリー・ボガード)が沈没の恐怖から精神錯乱に陥った。副長(バン・ジョンソン)は緊急に艦長を解任、嵐を乗りきり無事帰港するが、彼らを待っていたのは艦長解任の是非を巡る激しい軍事裁判だった。艦上の迫力あるスペクタクルと息詰まる法廷場面で見せる傑作サスペンス。軍事法廷の弁護士はホセ・ファーラー。
◆「ホワイト・クリスマス」監督:マイケル・カーティス
※第二次世界大戦後、デイヴィスとコンビを組み成功を収めたウォレス。戦友の姉妹と知り合った二人はバーモントでクリスマス休暇を取るが、彼らが泊まった山荘ホテルのオーナーは戦時中の上官ウェイバリー将軍だった。雪が降らずに山荘の経営が悪化していることを知った二人は、お客を集めるために山荘でのショウを企画する。雪が舞う中であの名曲が歌われる最後のシーンは感動的。出演:ビング・クロスビー、ダニー・ケイ、ローズマリー・クルーニー、ヴェラ=エレン。