■アカデミー賞
★作品賞:「80日間世界一周」監督:マイケル・アンダーソン
※ビクトリア王朝時代のイギリス。80日で世界一周できるかどうか賭けをした紳士フォッグ(デビッド・ニーブン)が召使パスパトゥを連れて旅に出た。パリ・スペイン・カルカッタ・横浜・サンフランシスコ・ニューヨークへと旅は続く。果たしてフォッグは時間までにイギリスへ帰ることができるのか?!また、ジョン・ギールグッドは首になった執事、シャルル・ボワイエは旅行店店主、フランク・シナトラはクラブのピアノ弾き、バスター・キートンは列車の車掌、ピーター・ローレは日本人の観光案内者、ジョン・ミルズは馬車の御者。世界のスターがちょい役で出演しているので、それを探すのも本作の楽しみだが、こういう特別主演を、このこの映画から、”カメオ出演”というようになった。
★監督賞:ジョージ・スティーブンス「ジャイアンツ」
※テキサスの大牧場主ビック・ベネディクト(ロック・ハドソン)のもとにメリーランドから嫁いできたレズリー(エリザベス・テイラー)は、家の古い慣習をつぎつぎと打ち破りながら、夫を愛し、子を育てていく。一方、彼女を密かに愛する牧童頭ジェット・リンク(ジェームス・ディーン)は、手に入れた土地から石油を掘り起こし、一夜にしてベネディクト一族を超える大金持ちとなっていく…。
★主演男優賞:ユル・ブリンナー「王様と私」
※リチャード・ロジャース&オスカー・ハマースタイン二世のミュージカル。19世紀末のシャム王家に、家庭教師としてやってきたリベラルなイギリス人女性(デボラ・カー)が、封建的思想の王様(ユル・ブリンナー)のかたくなな心を和らげ、やがて愛されるようになっていく。アカデミー賞では他に、美術、衣裳デザイン、録音、ミュージカル音楽賞を受賞。ふたりが『シャル・ウイ・ダンス』を歌い踊るシーンなど名場面がいっぱいあり、後にジョディ・フォスター、チョウ・ユンファ主演で『アンナと王様』としてリメイクされている。日本映画『Shall We ダンス?』の主題歌も本作から採ったもの。
★主演女優賞:」イングリッド・バーグマン「追想」
※監督:アナトール・リトバック。ロシアの将軍ボーニン(ユル・ブリンナー)は英国に預けられたロマノフ王朝の財産を、皇女アナスタシア(イングリッド・バーグマン)の替え玉を使い横取りしようと企むのだが…。アナスタシア生存説をもとに、ミステリー・タッチで展開する歴史ロマン。イングリッド・バーグマンの祖母の役にヘレン・ヘイズ。
★助演男優賞:アンソニー・クイン「炎の人ゴッホ」
※監督:ヴィンセント・ミネリ。アーヴィング・ストーン原作。後期印象派画家のゴッホ(カーク・ダグラス)の生涯を描いた作品。
★助演女優賞:ドロシー・マローン「風と共に散る」
※ダグラス・サーク監督。幼馴染のミッチ(ロック・ハドソン)、カイル(ロバート・スタック)とルーシー(ローレン・バコール)との三角関係を描く。ドロシー・マローンはミッチに恋するカイルの妹役。
■ベネチア映画祭
★作品賞:該当なし
★主演男優賞:ブールビル「パリ横断」
※「パリ横断」は、クロード・オータン=ララ監督作のコメディ。他に、ジャン・ギャバン、ルイ・ド・フュネスが出演している。
★主演女優賞:マリア・シェル「居酒屋」
※ルネ・クレマン監督。原作はエミール・ゾラ。19世紀なかばのパリ。内縁の夫に裏切られた洗濯屋のジェルヴェーズ(マリア・シェル)は、実直な屋根職人クポーと結婚。しかし、彼は事故で大怪我を負って以来酒浸りとなり、彼女の前夫を同居させてしまう。ロベール・ジェイアール撮影監督によるモノクロ映像が、当時のパリの雰囲気を見事に描いている。
★サン・ジョルジュ賞:「ビルマの竪琴」監督:市川崑
※太平洋戦争終結後、米軍の要請で抵抗する日本軍の残党を説得しに行き、そのまま行方不明となった水島上等兵。その消息を追う、同じ井上部隊の面々。やがて水島は、部隊の前に仏僧姿で現れるのだが…。出演:三國連太郎, 安井昌二, 西村晃, 北林谷栄, 伊藤雄之助。
★イタリア批評家賞:「攻撃」監督:ロバート・アルドリッチ
※第二次世界大戦下のベルギー戦線。米軍の無能な中隊長(エディ・アルバート)の判断ミスで仲間が次々と戦死していき憤る小隊長(ジャック・パランス)。しかし中隊長の父は政界の実力者であり、そのコネを用いて自分も政界に打って出ようと目論む上官(リー・マーヴィン)は、彼をとがめることもない。やがて小隊長は中隊長を殺そうと公言し、実行に移そうとする。
■カンヌ映画祭
★パルムドール:「沈黙の世界」監督:ジャック・イブ・クストー
※スキューバの生みの親で、海洋保護の第一人者としてその生涯を海に捧げたジャック=イヴ・クストーがルイ・マルと共に創り上げた傑作海洋ドキュメンタリー。イルカをはじめとする海洋生物たちの行動を生き生きと描く。
★監督賞:セルゲイ・ユトケービッチ「オセロ」
★主演男優賞:該当なし
★主演女優賞:スーザン・ヘイワード「明日泣く」
※スーザン・ヘイワードの出演作には、マーク・ロブソン監督「哀愁の花びら」、ウィリアム・A・ウェルマン監督「ボー・ジェスト」、デルマー・デイブス監督「ディミトリアスと闘士」、スチュアート・ヘイスラー監督「タルサ」、ルネ・クレール監督「奥様は魔女」、ヘンリー・キング監督「キリマンジャロの雪」などがある。
★審査員特別賞:「ピカソ 天才の秘密」(仏)
※20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソが本作のために取り掛かった作品の製作現場に密着したドキュメンタリー。アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督が、ピカソの知られざる一面を浮き彫りにする。
★この年の主要な作品
◆「上流社会」監督:チャールズ・ウォルターズ
※グレース・ケリー最後の出演作となった傑作ミュージカル。結婚前夜パーティ。前妻トレイシーが再婚することになって妙に落ちつかないデクスター(ビング・クロスビー)。そんな時、ゴシップ記者マイク(フランク・シナトラ)が現れ…。
◆「捜索者」監督:ジョン・フォード
※南北戦争終結から3年後、放浪の末に兄の家を訪れたイーサン(ジョン・ウェイン)は、やがて兄一家がコマンチ族に殺害され、幼い末娘デビー(ナタリー・ウッド)がつれ去られてしまったことを知り、復讐と姪を奪還するための、捜索の旅に出る。ジョン・ウェインが演技派としても一級であったことを証明した作品である。
◆「白鯨」監督:ジョン・ヒューストン
※復讐に憑かれた男と"怪物・白鯨"の戦いを描いた。エーハブ船長を演じたグレゴリー・ペックの鬼気迫る熱演が絶賛された海洋スペクタクル映画の決定版である。
◆十戒」監督:セシル・B・デミル
※3000年前のエジプト。ナイル川で拾われ、エジプト国王の王子として育てられたモーゼ(チャールトン・ヘストン)は、王の実子ラメシス(ユル・ブリンナー)の罠にはまり、砂漠に追放される。やがて彼は神の啓示により、イスラエルの民を連れてエジプト脱出を企てる。セシル・B・デミル監督が、自身のサイレント映画『十誠』を巨額の製作費でリメイクしたスペクタクル史劇。
◆「バス停留所」監督:ジョシュア・ローガン
※純情カウボーイ、ボー(ドン・マレー)と、男のことなど知り尽くしている歌手シェリー(マリリン・モンロー)のロマンスをコミカルに、次第にしっとりとした味わいを加えて描く。アクターズ・スタジオで修業したマリリン・モンローが、その成果を発揮したラブ・コメディ。
◆「監獄ロック」監督:リチャード・ソープ
※刑務所に入れられたビンス(エルヴィス・プレスリー)は、囚人仲間からギターや歌のてほどきを受けて、やがて出所してからロック歌手として成功する。せっかく作ったレコードをどこの店にも置いてもらえず、地方ラジオ局のDJに頼んで流してもらったら、またたくまに反響を呼んだというエピソードは、プレスリー自身の体験を基にしたもの。
◆「素直な悪女」監督:ロジェ・ヴァディム
※両親を亡くした美貌の娘ジュリアット(ブリジット・バルドー)は、孤児院暮らしから逃れるため富豪の次男との結婚を約束するが、長男を目の当たりにした彼女は…。なぜ純情で優しいジャン=ルイ・トランティニャンを棄てて、誠実さのかけらもないクリスチャン・マルカンに走るのか?しかし、バルドーは撮影が終わった後、J=L.トランティニアンと駆け落ちをしてしまったのです。
◆「影」監督:イエジー・カワレロウィッチ
※他のカワレロウィッチ監督の映画には、「クオ・ヴァディス」(2001年)、[尼僧ヨアンナ」(1961年)、「夜行列車」(1959年)などがある。