■アカデミー賞
★作品賞:アパートの鍵貸します(ビリー・ワイルダー)
※独身の平社員バド(ジャック・レモン)は、出世の糸口として上司の逢い引きに、自分のアパートの部屋を提供することを思いつく。ところがある日、人事部長が自分の部屋に連れ込んできた会社のエレベーターガール(シャーリー・マクレーン)は、バドが密かに思いを寄せる女性だった。サラリーマンの悲哀をペーソス豊かにつづったソフィスティケーションコメディ。
★監督賞:ビリー・ワイルダー「アパートの鍵貸します」
※「ビリー・ワイルダー監督は、その内側に毒と牙を隠し持った狼である」瀬戸川猛資著『夢想の研究―活字と映像の想像力』より。
★主演男優賞:バート・ランカスター「エルマー・ガントリー 」
※口八丁手八丁で女を乗り換えていく詐欺師まがいの男エルマー(バート・ランカスター)は、聖処女とも呼ばれる新興宗教団体の伝道師シャロン(ジーン・シモンズ)に一目ぼれし、彼女の気を引きたい一心で信徒拡大に取り組む。だが、かつて彼のために娼婦となってしまった女ルルが現れ、エルマーの黒い過去が暴かれてしまう。社会派リチャード・ブルックス監督によるヒューマン大作。
★主演女優賞:エリザベス・テーラー「バターフィールド8」
※監督:ダニエル・マン。モデルとは名ばかりの、“バターフィールド8”の番号で呼び出されるコールガール・グロリア。様々な男に体を売る彼女だが、妻子ある男性を真剣に愛してしまった。そして悲劇は不意に訪れる。共演は、ローレンス・ハービー, エディ・フィッシャー 。
★助演男優賞:ピーター・ユスティノフ「スパルタカス」
※監督:スタンリー・キューブリック。ローマ帝国時代、当時の大将軍クラサスに対して、勇敢にも反乱軍を組織し立ち上がったトラキア人の剣闘士奴隷スパルタカス(カーク・ダグラス)の生涯。降伏後、スパルタカスを指し示せ、そうすれば命は助けてやるといううクラサスに対し、口々に“I'm Spartacus!”と叫んで立ち上がる仲間たち。ピーター・ユスティノフは鉱山採掘奴隷だったスパルタカスを剣闘士にするために買う奴隷商人バタイアタスを演じた。他に、クラサスにローレンス・オリヴィエ、スパルタカスが愛した女性バリニアにジーン・シモンズ。
★助演女優賞:シャーリー・ジョーンズ「エルマー・カントリー」
※シャーリー・ジョーンズは娼婦ルル役で受賞。
■ベネチア映画祭
★作品賞:ラインの仮橋(アンドレ・カイヤット)
★主演男優賞:ジョン・ミルズ「栄光の旋律」
★主演女優賞:シャーリー・マクレーン「アパートの鍵貸します」
■カンヌ映画祭
★パルムドール:甘い生活(フェデリコ・フェリーニ)
※作家を夢見てローマに出てきたが、今はゴシップ記者のマルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)。彼が大富豪の娘(アヌーク・エイメ)と一夜を共にし、帰宅すると同棲相手が自殺未遂。取材で知り合ったハリウッド・スター(アニタ・エクバーグ)にはさんざん振り回され、唯一のより所でもあった知的な友人は、子どもと一緒に自殺してしまう。ショックを受けたマルチェロは乱痴気パーティへと興じていく。
★監督賞:該当なし
★主演男優賞:該当なし
★主演女優賞:ジャンヌ・モロー「雨のしのび逢い」
メリナ・メルクーリ「日曜はダメよ」
★審査員特別賞:情事(ミケランジェロ・アントニオーニ)、鍵(市川昆)
★国際批評家賞:処女の泉(イングマル・ベルイマン)
※キリスト教を深く信仰する娘カーリン(ビルギッタ・ペテルセン)が、その優しさが仇となり3人の男に犯され殺されてしまう。カーリンの父トーレ(マックス・フォン・シドウ)は男を殺し復讐を果たすが罪の意識に苛まれていく。
★この年の主要な作品
◆太陽がいっぱい 監督:ルネ・クレマン
※貧乏なアメリカ青年トム(アラン・ドロン)は、金持ちの息子フィリップ(モーリス・ロネ)を連れ戻すため、ナポリにやってきた。フィリップにねたみを覚えたトムは、殺して恋人(マリー・ラフォレ)と裕福な生活を手に入れようとする。そして計画どおり殺害し、自殺に見せかけるが…。原作は、パトリシア・ハイスミス。アンリ・ドカエの美しい映像と、ニーノ・ロータの名旋律が印象的だ。
◆許されざる者 監督:ジョン・ヒューストン
※長男でベン(バート・ランカスター)の下、平和に牧場を営むザカリー一家。美しく成長した養女のレーチェル(オードリー・ヘプバーン)は近くの牧場の長男チャーリーと婚約していた。ところが、不気味な老人がレーチェルにはインディアンの血が流れているという噂を広める。やがてカイオワ族の酋長がベンの前に現れ、幼い時に別れた妹を返せと迫る。要求を拒絶するベン。だが、婚約者チャーリーがカイオワ族に惨殺され、ザカリー一家は孤立する。ヘップバーン唯一の西部劇。
◆荒野の七人 監督:ジョン・スタージェス
※毎年、野盗に襲われるメキシコの寒村イストラカン。村の長老は助っ人を雇うことを決意する。わずかな報酬にすぎなかったが、農民達の熱意に打たれて、クリス(ユル・ブリンナー)、ヴィン(スティーブ・マックィーン)、オライリー(チャールズ・ブロンソン)、ブリット(ジェームズ・コバーン)、チコ(ホルスト・ブーフホルツ)、リー(ロバート・ヴォーン)、ハリー(ブラッド・デクスター)ら、7人のガンマンが集まってきた。黒澤明『七人の侍』をモチーフに作られた映画。
◆サイコ 監督:アルフレッド・ヒッチコック
※顧客の金4万ドルを横領して逃亡するマリオン・クレーン(ジャネット・リー)は一軒のさびれたモーテルへ宿泊する。経営者の青年ノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)と語り合うことで、もう一度、やり直すことを決心するが、サスペンスはそこから始まる。「シャワー殺人」のシーンはスリラー映画史上空前の反響を呼び、その後多くの模倣やパロディを生んだ。