■アカデミー賞
★作品賞:「スティング」監督:ジョージ・ロイ・ヒル
※仲間を殺したギャングの大ボス(ロバート・ショウ)から大金を巻き上げようとする詐欺フッカー(ロバート・レッドフォード)と彼に協力する伝説の詐欺師ゴンドーフ(ポール・ニューマン)の策略。そして、ラストの大ドンデン返し。スコット・ジョプリンのラグタイムピアノが、30年代ムードを盛りあげる。
★監督賞:ジョージ・ロイ・ヒル「スティング」
※詐欺師の手法をフィールドワークで集めたアメリカの言語学者デヴィッド・W・モラーの著作「詐欺師入門―騙しの天才たち その華麗なる手口」に基づき ポール・ニューマン, ロバート・レッドフォード他の出演で製作してアカデミー賞7部門受賞した。
★主演男優賞:ジャック・レモン「セイブ・ザ・タイガー」
※監督:ジョン・G・アヴィルドセン。ベトナム戦争から帰還後に興した服飾会社の資金繰りに悩むハリー(ジャック・レモン)は、毎朝目覚める度に憂鬱な気持ちだった。そんな彼に追い討ちを掛けるようにトラブルが発生する。そして保険金詐欺の誘惑。タイトルの「セイブ・ザ・タイガー」とは劇中に一瞬出てくる、絶滅寸前のベンガル虎救済の募金活動のこと。なおアヴィルドセン監督は「ロッキー」で1976年、アカデミー賞監督賞を受賞する。
★主演女優賞:グレンダ・ジャクソン「ウィークエンド・ラブ」
※アカデミー賞の歴史で、外国人(グレンダ・ジャクソンはイギリス人)が外国映画で主演賞を二回受賞(1970年「恋する女たち」)した人は、今のところグレンダ・ジャクソン一人だけである。
グレンダ・ジャクソンの他の出演作には、「ケン・ラッセルのサロメ」、ロバート・アルトマン監督「ニューヨーカーの青い鳥」、ロドリック・グラハム監督「エリザベスR」、「「マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺」、「ボーイフレンド」、「恋人たちの曲/悲愴」がある。
★助演男優賞:ジョン・ハウスマン「ペーパー・チェイス」
※監督・脚本:ジェームズ・ブリッジス。ハーバート大学を舞台に、エリート・コースを邁進する学生が身を持って体験する試験地獄と愛を描く。他の出演者は、ティモシー・ボトムズ(ジョニーは戦場へ行った)、リンゼイ・ワグナー(みにくいアヒルの子)。
ジョン・ハウスマンの他の出演作には、「ローラーボール」、「セント・アイブス」、「私の中のもうひとりの私」、「ザ・ファーム 法律事務所」などがある。
★助演女優賞:テイタム・オニール「ペーパー・ムーン」
※監督:ピーター・ボグダノヴィッチ。聖書を売りつける詐欺師の男(ライアン・オニール)と、母親を交通事故で亡くした9歳の少女(テイタム・オニール)との、互いの絆を深めていく様を描いたロード・ムービー。あえて白黒で撮影したノスタルジックな映像が生きる。
■ベネチア映画祭
※開催中止
■カンヌ映画祭
★パルムドール:
☆「スケアクロウ」監督:ジェリー・シャッツバーグ)
※刑期を終えたマックス(ジーン・ハックマン)は、故郷のピッツバーグでカー・ウォッシュの開業を目論む。一方、元船員・ライオン(アル・パチーノ)は5年前に妊娠中の妻を残してきたデトロイトに帰る途中だった。カリフォルニアのハイウェイで知り合ったふたりは、徐々に心を通い始め、奇妙な道中を共にする。我が国でも70年代初頭の映画青年の胸を熱くした「スケアクロウ」だが、現在も、そのやるせない感動は健在だ。
☆「雇い人」監督:アラン・ブリッジス
※アラン・ブリッジス監督には「The Shooting Party」「逢いびき」等の作品がある。
★主演男優賞:ジャンカルロ・ジャンニーニ「愛とアナーキーの映画」
※ジャンカルロ・ジャンニーニの他の出演作は、 ルキノ・ヴィスコンティ監督、ラウラ・アントネッリ共演「イノセント」、パオロ・カヴァラ監督、ステファニア・サンドレッリ共演のエロスサスペンス「タランチュラ」、ディーノ・リージ 監督、ラウラ・アントネッリ共演「セッソ・マット」、ヴァレリオ・ズルリーニ監督、アラン・ドロン主演「高校教師」、アルフォンソ・アラウ監督、キアヌ・リーブス主演「雲の中で散歩」、スパニッシュ・ホラーの鬼才ジャウマ・バラゲロ監督によるミステリー・ホラー「ダークネス」等がある。
★主演女優賞:ジョアン・ウッドワード「まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響」
※「まだらキンセンカにあらわれるガンマ線の影響」は、変わり者で自堕落な未亡人と自分の道を歩もうとする2人の10代の娘の日常を描いたジョアン・ウッドワードの夫であるポール・ニューマンの監督第3作。
※ジョアン・ウッドワードの他の出演作は、アカデミー賞主演女優賞を受賞したナナリー・ジョンソン監督「イブの三つの顔」、シドニー・ルメット監督、マーロン・ブランド共演「蛇皮の服を着た男」がある。
★審査員特別賞:「ママと娼婦」 監督:ジャン・ユスターシュ(仏)
※定職も人生の目標もない上、女にもだらしないアレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)は、ブティックを経営している年上の女マリー(ベルナデット・ラフォン)と同棲し、無為な日々を送っていた。ある日、彼はカフェで若いベロニカ(フランソワーズ・ルブラン)をナンパし、やがて3人の奇妙な共同生活が始まる。男に必要なのは恋人でも愛人でもなく、母親と娼婦であると言われるが、その言説をそのまま映画にしてしまったポスト・ヌーヴェルヴァーグ最大の傑作。
★国際批評家賞:
☆「最後の晩餐」 監督:マルコ・フェレーリ(仏/伊)
※パリの大邸宅にある共通の目的を持った4人の男たちが集う。美食通で知られる彼らは、昼夜を問わず酒池肉林の宴を繰り広げ始める。出演はフィリップ・サルド, アンドレア・フェレオル, マリオ・ヴァリピアーニ, ラファエル・アスコナ, フィリップ・ノワレ。
マルコ・フェレーリ監督の他の作品には、 マルチェロ・マストロヤンニ, カトリーヌ・ドヌーヴ主演「ひきしお」、ロベルト・ベニーニ主演「マイ・ワンダフル・ライフ」、ベン・ギャザラ主演「ありきたりな狂気の物語」がある。
☆ママと娼婦(仏)
★この年の主要な作品
◆「アメリカン・グラフィティ」 監督:ジョージ・ルーカス
※ベトナム戦争勃発前の1962年、カリフォルニア北部の小さな田舎町を舞台に、ハイスクールを卒業し東部の大学へ出発する若者たちの、最後の一夜を描いた青春映画の傑作。ドライヴインに次々に集まるカスタム・カー。ローラースケートを履いてハンバーガーとコークを運ぶ女の子。ボリュームいっぱいに流れる『Rock Around The Crock』など1960年代の軽快な雰囲気が懐かしい。主演はリチャード・ドレイファス。ハリソン・フォードも出演している。
◆「エクソシスト」 監督:ウィリアム・フリードキン
※女優のクリス(エレン・バースティン)は、一人娘リーガン(リンダ・ブレア)の異変に気付く。日を追って激しくなるリーガンの異常な挙動は医者からも見放され、娘が悪霊に取り憑かれたと知ったクリスは、カラス神父(ジェイソン・ミラー)に悪魔払いを依頼する。悪魔払いの経験があるメリン神父(マックス・フォン・シドー)と共にカラス神父は悪魔に対決を挑む。これまでの恐怖映画とは一線を画す完成度の高い作品。他に、キンダーマン警部にリー・J・コッブ、ダイアー神父にウィリアム・オマリー。
◆「追憶」 監督:シドニー・ボラック
※1937年、大学のキャンパスで政治活動に熱中するケイティ(バーブラ・ストライサンド)とノンポリのハベル(ロバート・レッドフォード)は出会い、互いの思想の相違を感じるが、戦争中にふたりは再会し、急速に愛し合うようになり結婚する。やがてハベルは映画脚本家となるが、50年代ハリウッド赤狩りの中、ケイティは反マッカーシズム運動を展開する一方、ハベルは己の創作に限界を感じ始める。ノスタルジー映画の代表作。ストライサンドが歌う主題歌「追憶」は、映画音楽のスタンダード・ナンバー。
◆「映画に愛をこめて アメリカの夜」 監督:フランソワ・トリュフォー
※映画撮影の日常をスケッチ風につづりながら、すべての映画を愛する人々に捧げられたフランソワ・トリュフォー監督(自身も映画監督役で出演)の名作。タイトルの「アメリカの夜」とは、レンズにフィルターをかけて昼間の撮影でも夜のシーンに見せてしまうこと。それは即ち虚構の象徴であり、またそれこそが映画の魅力でもある。主演のジャックリーン・ビセットはその美貌と、英仏語が話せる語学力で欧米を股にかけて活躍した70年代を代表する美人女優。
◆「愛の嵐」 監督:リリアーナ・カヴァーニ
※身元を隠してホテルで働く元ナチスの将校だったマックス(ダーク・ボガート)は、ある日収容所時代に弄んだ女性ルチア(シャーロット・ランプリング)と再会。ふたりは当時の想いを再び燃え上がらせる。ルチアがナチス将校のパーティで裸体にナチの制服をまとって歌い踊るシーンはあまりにも有名。
◆「燃えよドラゴン」 監督:ロバート・クローズ
※米と香港の合作で、世界を席巻したカンフー映画の傑作。ブルース・リーが麻薬密売の内情を暴くため、単身でハン(シー・キエン)の要塞島に乗り込む。カンフーが世界的なブームとなり、現在の格闘技ブームにも大きな影響を与えた記念碑的作品。「ラロ・シフリンのテーマ曲」もヒットした。