■アカデミー賞
★作品賞:「ゴッドファーザー PART II」監督:フランシス・F・コッポラ
※亡き父の後を継ぎファミリーのドンとなったマイケル(アル・パチーノ)は、堅気の家業に乗り出すが、彼の意向とは裏腹に再び血で血を洗う抗争が勃発する。若き日のドン(ロバート・デ・ニーロ)と現在のその息子マイケルという、2つのストーリーをフラッシュバックさせ、作品に厚みを与えた。他に、ロバート・デュバル、ダイアン・キートン、ジョン・カザール。
★監督賞:フランシス・F・コッポラ「ゴッドファーザーPARTU」
※「昔から続編というやつは2匹目のドジョウを狙って作られ、だいたい前作より安っぽいまがいものになる、という考え方がある。私はそうした観念を叩き潰したかった。」というコッポラの意思どうり前作を凌ぐ傑作と評価された。
★主演男優賞:アート・カーニー「ハリーとトント」
※老人ハリー(アート・カーニー)と老猫トントが兄を見舞うためアメリカを横断するポール・マザースキー監督のロード・ムービー。
★主演女優賞:エレン・バーンスティン「アリスの恋」監督:マーティン・スコセッシ
※歌手を目指しながら、今は平凡な主婦になっているアリス(エレン・バースティン)は、夫を交通事故で亡くし、ひとり息子のトムを連れて故郷のモンタレーへ帰ることになり、オンボロ車で旅立つ。エレン・バーンステインの飾りのない自然な演技は見事。
★助演男優賞:ロバート・デ・ニーロ「ゴッドファーザーPARTU」
※コッポラ監督は、若かりし頃のドン・コルレオーネ役として、当時無名のロバート・デ・ニーロを抜擢。彼の出世作にして、マーロン・ブランドにも迫る神がかり的な演技を見せた。
★助演女優賞:イングリッド・バーグマン「オリエント急行殺人事件」監督:シドニー・ルメット
※アガサ・クリスティ原作の映画化作品のなかでも、本作は上質な仕上がりとして名高い。何と言っても異例なまでのオールスターキャストが作品のグレードをアップさせている。ポアロのアルバート・フィニー, ローレン・バコール,ジャクリーン・ビセット、ショーン・コネリーから、本作でオスカー受賞のイングリッド・バーグマン、さらにデームの称号を持つウェンディ・ヒラーまで、全キャストのミステリアスな演技は特筆に値する。大雪で動けなくなったオリエント急行内での密室殺人は、どの乗客も怪しく感じさせてくれる。
■ベネチア映画祭
※開催中止
■カンヌ映画祭
★パルムドール:「カンバセーション…盗聴…」監督:フランシス・F・コッポラ
※舞台はサンフランシスコ。盗聴のプロ(ジーン・ハックマン)が、仕事で不倫カップルの会話を盗み聴いたところ、そのテープには「殺されるかもしれない」との声が入っていた。やがて依頼主がふたりを殺そうとしていることを悟る。コッポラが意欲的な作劇法で演出したプライベートフィルムに近い形のサスペンスドラマ。コッポラの代表作とするファンも多い。
★主演男優賞:ジャック・ニコルソン「さらば冬のかもめ」監督:ハル・アシュビー
※基地の募金箱から40ドルを盗んだ罪で8年の実刑が決まった若い水兵を海軍将校2人が休暇気分で護送することになる。3人はやがて奇妙な連帯感で結ばれていく。アメリカン・ニューシネマ後期の傑作。共演にランディ・クエイド。
★主演女優賞:マリー・ジョゼ・ナット「Les Violons du Bal」
★審査員特別賞:アラビアンナイト(伊)
※ヌル・エド・ディンは、女奴隷ズルムードを買い、ふたりで幸福な生活を送っていた。しかし、ズルムードは青い目の男バルムスに奪われてしまう。ヌル・エド・ディンのズルムード捜しの旅のほかに、『アラビアンナイト』の挿話がつづられる。ピエル・パオロ・パゾリーニが「デカメロン」「カンタベリー物語」に続いて監督した艶笑三部作、あるいは生の三部作の第三作目。出演はニネット・ダヴォリ, フランコ・チッティ。
★国際批評家賞:
☆angst Essen Seele auf(独)
☆Lancelot Du Lac(仏)
★この年の主要な作品
◆「タワーリング・インフェルノ」 監督:ジョン・ギラーミン
※サンフランシスコに建てられた、地上138階という世界一の超高層ビル「グラス・タワー」。その落成式当日に火災が発生。またたく間にビルは燃えあがりパニックになる。とり残された人々を救うため、ビル設計者(ポール・ニューマン)や消防隊長(スティーブ・マックィーン)らは大胆な救出作戦を実行に移した。他にフェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、フレッド・アステア「ゴールデングローブ賞助演男優賞)、ジェニファー・ジョーンズ、ロバート・ボーン、ロバート・ワグナーらが出演したあらゆる面でスケールの大きい作品。
◆「華麗なるギャツビー」 監督:ジャック・クレイトン
※脚本:フランシス・フォード・コッポラ。ニューヨーク郊外のウェスト・エッグに越してきた青年ニック(サム・ウォーターストン)。対岸のイースト・エッグには彼の従妹デイジー(ミア・ファロー)が夫のトム(ブルース・ダーン)と住んでおり、ニックはデイジーから隣に住む豪邸の主人、ギャツビー(ロバート・レッドフォード)の噂を耳にする。ギャツビーは夜毎にパーティーを催すが、決して自分はパーティーに参加しないミステリアスな存在だった。20年代ニューヨークの上流社交界を舞台に、富と名声を手に入れたひとりの男の知られざる過去と悲恋を描く。カレン・ブラックがトムの情婦マートル役でゴールデングローブ賞助演女優賞。
◆「チャイナタウン」 監督:ロマン・ポランスキー
※37年のロサンゼルス。私立探偵のジェイク(ジャック・ニコルソン)は、建築技師の妻・モーレイ夫人と名乗る女から浮気調査を依頼される。しかし本物のモウレー夫人イヴリン(フェイ・ダナウェイ)が、新聞に掲載された写真を見てジェイクの前に現れる。直後、技師モーリーの溺死体が上がった。調査を始めたギテスは、事件の裏にモーリー夫人の実父で政界の黒幕クロス(ジョン・ヒューストン)の存在を見出す。伏線に次ぐ伏線を散りばめた傑作探偵サスペンス。
◆「ヤング・フランケンシュタイン」 監督:メル・ブルックス
※ボルティモアの脳外科医フレデリック(ジーン・ワイルダー)は、曾祖父フランケンシュタイン博士の遺産を継ぐため、トランシルヴァニアの古城へと赴いた。その地下室で彼は、曾祖父の記した実験ノートを頼りにモンスター(ピーター・ボイル)を誕生させてしまう。しかし、そのとき用いた脳みそが、とんでもないアブノーマルなものだった。当時の雰囲気を出す為に、ユニヴァーサルの旧作のセットを使ってモノクロで撮影され、ギョロ目のマーティ・フェルドマンやコケティッシュなテリー・ガー、ピーター・ボイル、マデリーン・カーン、そしてジーン・ハックマンなど脇役たちの怪演も相まってまさに超一級のエンタテインメント映画に仕上がっている。
◆「ガルシアの首」 監督:サム・ペキンパー
※メキシコの大地主が、娘を妊娠させたガルシアという男の首に賞金をかけた。酒場のピアノ弾きのベニー(ウォーレン・オーツ)は、ガルシアが既に死んでいることを知り、墓場からその首を持ち出すが、金目当ての男は彼一人ではなかった。圧倒的な暴力描写で世界中にコアファンを持つサム・ペキンパー監督渾身の一作。ヴァイオレンス・アクション映画の傑作だ。
◆「悪魔のいけにえ」 監督:トビー・フーパー
※米国テキサス州に帰郷した5人の男女が、人皮によって創られた仮面を被った大男「レザーフェイス」により殺害されていく様子を捉えたホラー作品。1957年にウィスコンシン州プレインフィールドで実際に発生したエド・ゲインによる猟奇殺人事件をモデルにしている。
◆「エマニエル夫人」 監督:ジュスト・ジャカン
※20歳の若妻エマニエル(シルヴィア・クリステル)は、夫の赴任先であるタイで様々な性体験に身を委ねる。性の哲学者とも言うべきマリオ老人と出会ったエマニエルは、さらなるアバンチュールを重ね、やがて成熟した大人の女性へと変貌していく。ポルノ映画でありながら多くの女性客を集めて社会現象となったフランス映画。
◆「家族の肖像」 監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
※ローマの豪邸で隠遁生活を送る老教授(バート・ランカスター)。しかし強引なビアンカ夫人(シルヴァーナ・マンガーノ)の差し金で、二階の部屋を彼女の若い愛人コンラッド(ヘルムート・バーガー)に貸すハメになる。やがて同居人の数も増え、お互いがお互いをののしる中、教授の静かな日常は完全に破壊されてしまう。ヴィスコンティ監督が、自らの死を予見しながら描いたとも思しき自画像的傑作。