■アカデミー賞
★作品賞:「アニー・ホール」監督:ウディ・アレン
※NYで優雅な独身生活を送っていたナイトクラブのスタンダップ芸人アルビー(ウディ・アレン)は歌手志望のアニー(ダイアン・キートン)と出逢い、自由な交際という約束で彼女と付き合い始め、やがて同棲する。なんとなくうまくいっていた二人だが時がたつにつれて、お互いのアラが目についてきた。そんな時、アニーは人気歌手トニー(ポール・サイモン)から歌を褒められ、ハリウッド行きを勧められる。アルビーは引きとめるがアニーは旅立つ決意を固める。
★監督賞:ウディ・アレン「アニー・ホール」
※「涙の出るコメディー、極上のラブストーリー」とチャップリンが絶賛した本作はウディ・アレンの私小説的な映画。アレン自身もスタンダップの出身であり、アニー役は実際に同棲の後別れたダイアン・キートンである。また、ウディ・アレンがジャズ好きである事は有名だが、アカデミー賞授賞式を欠席して、定例のセッションであるという理由で、同時刻にN・Yのジャズ・クラブで演奏していた。
★主演男優賞:リチャード・ドレイファス「グッバイガール」
※ハーバード・ロス監督作。脚本はニール・サイモン。ポーラ(マーシャ・メイスン)とルーシー(クィン・カミングス)母子が二人暮しをしているところにエリオット(リチャード・ドレファス)が尋ねてきてアパートの所有権を主張する。男にだまされっぱなしの二人はエリオットを入れまいとするが、お金を払っていた彼は結局、同居することになる。リチャード・ドレイファスのコメディに徹した演技が印象に残る。
★主演女優賞:ダイアン・キートン「アニー・ホール」
※ダイアン・キートンは、1946年1月5日ロサンゼルス生まれ。ニューヨークのネイバーフッド・プレイハウスで演技を学び、ブロードウェイのミュージカル「ヘアー」に出演。1970年にはウッディ・アレンの舞台「ボギー!俺も男だ」にも出演し成功。その後アレンとは公私にわたるパートナーとなり、彼の多くの映画に出演している。メグ・ライアン主演の「電話で抱きしめて」では監督もこなした。
★助演男優賞:ジェーソン・ロバーズ「ジュリア」
※劇作家リリアン・ヘルマンの自伝小説「ジュリア」を元に、地下組織に身を投じて反ナチ活動を進めるジュリアとの友情を軸に、サスペンス・タッチも交えて描いたフレッド・ジンネマン監督の秀作。
1934年、劇作家リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)は、恋人のハードボイルド作家ダシェル・ハメット(ジェーソン・ロバーズ)と海辺の家で創作に取り組んでいた。リリアンは古い友人ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を回想する。
ジェーソン・ロバーズ演じるハメットは、リリアンを頑強な女性と呼び、30年間生活をともにしてリリアンを支えた。DVDは製造中止。
★助演女優賞:バネッサ・レッドグレーブ「ジュリア」
※この映画ほど助演が生彩を放った作品は稀だ。ジュリアのバネッサ・レッドグレーヴ、ハメットのジェーソン・ロバーズ。ともに主役のジェーン・フォンダがかすんでしまうくらい、存在感は強烈だった。また、これがデビュー作であるメリル・ストリープもすでに貫禄の演技を見せる。
■ベネチア映画祭
※開催中止
■カンヌ映画祭
★パルムドール:「父 パードレ・パドローネ」監督・脚本:パオロ&ビットリオ・タビアーニ
※イタリアのサルディーニャ島を舞台に、羊飼いの厳格な父(オメロ・アントヌッティ)に学校から連れ出され、読み書きを習わずに育った文盲の少年カヴィーノ(ファブリツィオ・フォルテとサヴェリオ・マルコーニ)が父に反発しながらも言語学者として大成する姿を描く。原作は言語学者ガヴィーノ・レッダの自伝「父パードレ・パドローネ―ある羊飼いの教育」。原作者本人も最初と最後に登場する。また、タイトルのパードレは父で、パドローネは主人の意である。
★主演男優賞:フェルナンド・レイ「エリサ、わが命」
※監督は、「血の婚礼」「カルメン」「恋は魔術師」のフラメンコ三部作で名声を確立したカルロス・サウラ。
★主演女優賞:
☆シェリー・デュバル「三人の女」
※カリフォルニアのパーム・スプリングスを舞台に、女性3人の関わりを通じて女同志の虚栄、反発、嫉妬などの感情のからみを描いた、ロバート・アルトマン製作・監督・脚本の映画。シェリー・デュヴァルは老人患者専門のリハビリテーション・センターで働く付添い看護人ミリー・ラモローを演じた。他に、「シャイニング」「アニー・ホール」 等に出演している。
☆モニク・メルキュール「写真家J・A・マルタン」
※モニク・メルキュールは、フランソワ・ジラール監督の「レッド・バイオリン」などに出演している。
★国際批評家賞:
☆「父/パードレ/パドローネ」(伊)
☆「九ヶ月」(ハンガリー)
★この年の主要な作品
◆「スター・ウォーズ」 監督:ジョージ・ルーカス
※人種問題や国際問題がからみ、善玉・悪玉の設定が難しい現代において、思い切り「他愛もない活劇」を作るとしたら、舞台は宇宙しかないと考えたジョージ・ルーカス。ホース・オペラ(西部劇)をもじって、「スペース・オペラ」という言葉も生み、史上空前の大ヒット作となった。出演は、マーク・ハミル, ハリソン・フォード, キャリー・フィッシャー, アレック・ギネスほか。
◆「未知との遭遇」監督:スティーブン・スピルバーグ
※電気技師のロイ(リチャード・ドレイファス)は、町の停電を調べている際にUFOと遭遇。やがて彼は、その光の虜となり、会社を首になり妻子に見放されながらも、光を追いかける。そしてついにたどり着いた先で、彼が見たものとは・・・。原題の「Close Encounters of the Third Kind (第三種近接遭遇)」は、元アメリカ空軍 UFO 研究部顧問のアレン・ハインネックの著書で提唱された用語。ハイネックは本作のスーパーバイザーを務め、作品中にもチラリと登場している。
◆「愛と喝采の日々」監督:ハーバート・ロス
※プリマ・バレリーナとして成功したエマ(アン・バンクロフト)と、結婚してバレエ界を引退したディーディー(シャーリー・マクレーン)。2人の対照的な人生を中心に、女の幸福は結婚か、それとも仕事をもった自立した人生を生きることか?と問いかけ、ディーディーとエマの勧めでバレリーナになるエミリア(レスリー・ブラウン)親子の情愛を盛りこみながら展開される人生ドラマ。エミリアの恋人役でミハイル・バリシニコフが映画初出演。
◆「サタデー・ナイト・フィーバー」監督:ジョン・バンダム
※ニューヨークのペンキ屋で働くトニー(ジョン・トラボルタ)は、変わりばえのない毎日の生活にうんざりしていた。彼の生き甲斐は土曜日の夜(サタデーナイト)にディスコ「2001年オデッセイ」で踊り明かすことだけ。そこではトニーはダンス・キングだ。ある日、ディスコで年上の女性ステファニー(カレン・リン・ゴーニイ)に出会い、自分の生き方を考え直すようになる。ジョン・トラボルタの華麗なダンスはもちろん楽しめるが、テーマ性をもったストーリーもしっかりしている映画だ。ビージーズ他のサントラ「サタデー・ナイト・フィーバー」も大ヒットした。
◆「ニューヨーク、ニューヨーク」監督:マーティン・スコセッシ
※第二次世界大戦が終った日のニューヨークで出会った、サックス奏者ジミー(ロバート・デ・ニーロ)と人気歌手フランシーヌ(ライザ・ミネリ)。愛し合いながらも愛する音楽のため別れなければならない二人の愛と別れ。
◆「ブラック・サンデー」監督:ジョン・フランケンハイマー
※ベイルートのテロ組織「黒い9月」(マルト・ケラー、ブルース・ダーンら)は、マイアミで開催されるスーパーボウルの襲撃を計画。8万人の観客がテロの標的となる。そのことを知ったイスラエル特殊部隊カバコフ少佐(ロバート・ショー)は組織のアジトを急襲する。クライマックスの気球船を用いたスーパーボウル襲撃シーンが名高い。原作は「羊たちの沈黙」「ハンニバル」のトマス・ハリスの小説。なお、日本では「政治的配慮」で上映禁止となった。
◆「特攻サンダーボルト作戦」監督:アーヴィン・カーシュナー
※1976年6月27日、テルアビブ発パリ行きのエール・フランス機が、アテネ空港出発30分後にハイジャックされた。乗客の中にユダヤ人90名がいる。飛行機はウガンダのエンテベに着陸した。イスラエルのラビン首相(ピーター・フィンチ)はダン・ショムロン准将(チャールズ・ブロンソン)を司令官に150人の精鋭部隊が組織し、人質救出を命じる。作戦名は「サンダーボルト」。エンテベでユダヤ人以外の人質全員が解放された。テロリストたちの要求は世界各国に拘留されているゲリラ53人を釈放せよ、というもの。要求のタイム・リミットの前日、救出部隊がエンテベ空港に着陸、ロビーのゲリラ7人を撃ち殺し、人質全員を乗せて離陸するまで、わずか53分の救出作戦だった。これも当時、日本では「政治的配慮」で上映禁止となった。DVD未発売。
◆「マイ・ソング」監督:ジョセフ・ブルックス
※無名の下積み女性タレントローリー(ディディ・コン)が恋をし、恋に破れ、再び生きていく姿を描く。ローリーの歌う「ユー・ライト・アップ・マイ・ライフ」がアカデミー賞音楽(主題歌)賞受賞。DVD、VHS未発売。
◆「欲望のあいまいな対象」監督:ルイス・ブニュエル
※ピエール・ルイスの小説『女と人形』の五度目の映画化。美しい小間使い(キャロル・ブーケとアンヘラ・モリーナの2人1役)に魅せられた紳士(フェルナンド・レイ)が体験する女の二面性の不思議。どこまでも堕ちてゆく甘美で残酷な愛。フランス、スペイン、アメリカ、メキシコで多種多様な映画を撮ったルイス・ブニュエルは1983年肝硬変で亡くなり、これが遺作となった。
◆「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」監督:ニキータ・ミハルコフ
※チェーホフの戯曲「プラトーノフ」と短編「地主屋敷で」「文学教師」「三年」「わが人生」をモチーフにして映画化。将軍の未亡人邸で催された結婚披露パーティー会場を舞台に、将軍の息子である新郎と新婦ソフィア、新婦の昔の恋人で村の教員ミハイル・プラトーノフとその妻アレクサンドラ(サーシャ)など、会場に集まったそれぞれの関係が描かれていく。今やロシアを代表する映画監督の一人となったニキータ・ミハルコフの初監督作。出演は、アントニーナ・シュラーノワ、アレクサンドル・カリャーギン、エレーナ・ソロヴェイ、ユーリー・ボガトイリョフ、エフゲニヤ・グルシェンコ、ほか。
このころは一番映画を観ていなかった時期ですが、上にあがっている映画の中では「ジュリア」、「父パードレ・パドローネ」、「欲望のあいまいな対象」、「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」が個人的に好きです。「血の婚礼」と「カルメン」のカルロス・サウラ監督やウディ・アレンの「アニー・ホール」も懐かしい。
年毎に映画を振り返るというのは僕もやりかけているのですが、面白い企画ですね。時々参考にさせていただきます。
コメントとTB有難うございます。
TBさせていただいたのは、「1982年の映画」で紹介したユルマズ・ギュネイ監督のトルコ映画 「路」に、「亀も空を飛ぶ」でふれられていたからです。
「銀の森のゴブリン」の充実した記事に感服しています。また時々お邪魔させていただきます。
多分、ミハルコフ監督関連でTBして下さったのだと思います。
『時計仕掛けの〜』は、先日DVDを購入したところです。が、まだ未見です。いずれゆっくり時間の取れる時に見よう、と思っています。
この監督の豪華で美しい映像、とても好きです。密かに、イタリアはヴィスコンティ、ロシアならミハルコフ、と思っています。
ヴィスコンティやミハルコフの作品はハリウッドでは生まれようもない映画ですよね。
『機械じかけの〜』は衛星放送から録画したビデオで見てるんですが、完成度の高い映像は小さな画面でも結構楽しめますね。
ヴィスコンティしかり!
年代別に映画をレビューしていくのは面白い試みと思います。私も時間と都合と機会のある時に、名作と言われる映画を観るように心がけています。ここに取り上げられているそれぞれの映画も面白そうです。いつか観てみたいと思います。
それではまた。
スペインにお住まいなんですね。スペインの「奇想天外なスケールとイメージを育んだ土壌」は2大世界宗教が激しくぶつかり合ったとこらから生まれたものなんでしょうか?